雄略天皇

第 3 章

雄略天皇ゆうりゃくてんのう

荒ぶる大王が、葛城の山で神と出会う。

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この物語は、原文を読みやすく現代語にしたかなり“はしょった”要約・脚色版です。細部や表現は正確な原文・訳注書と異なる場合があります。

第二十一代・雄略天皇ユウリャクテンノウは、古事記のなかでもひときわ激しい人物として描かれます。即位の前後には、皇位を争う兄弟や従兄弟を次々に討ち、気に入らぬ者があれば容赦しませんでした。人々は彼を「大悪天皇」と呼び、同時に「有徳天皇」とも称えたと伝えられます。

ある日、天皇が葛城山(かつらぎやま)に登ったときのことです。向かいの尾根を、行列が進んでいるのが見えました。よく見ると、その装束も、人数も、隊列の様子も、自分たちとまったく同じです。

葛城山に登る大王
葛城山に登る大王

天皇は怒って叫びました。「この倭の国に、我のほかに大王はないはずだ。何者だ」。すると相手も同じ言葉を返してきます。天皇はいよいよ怒り、矢をつがえました。相手もまた、同じように矢をつがえます。

そこで天皇が名を問うと、向こうが先に名乗りました。「我は悪事も一言、善事も一言、言い離つ神。葛城之一言主大神カツラギノヒトコトヌシノオオカミである」。それを聞いた天皇は畏れ入り、太刀や弓矢、供の者たちの衣服まで脱がせて献上し、深く拝みました。神は喜び、山を下りる天皇を長谷の入り口まで送り届けたといいます。

向かいの尾根の行列
向かいの尾根の行列

荒ぶる大王でさえ、神の前には頭を垂れる。力を誇る者と、それを超える存在との関係を鮮やかに示す場面です。

神に太刀を献ずる
神に太刀を献ずる

一方で雄略天皇は、豊かな歌の世界も残しました。三輪川のほとりで出会った美しい乙女・赤猪子(アカイコ)に「宮に召そう」と告げたまま、うっかり八十年も忘れてしまい、老いた彼女が現れたときには深く恥じて歌を贈った、という物語も伝えられています。

登場する人物・神々

雄略天皇
ユウリャクテンノウ
第二十一代天皇。苛烈な気性で知られる一方、歌人としての一面も持ちます。
一言主大神
ヒトコトヌシノオオカミ
葛城山の神。善悪を一言で言い放つ託宣の神です。
赤猪子
アカイコ
天皇の言葉を信じて八十年待ち続けた女性。切ない歌物語を残します。
葛城山
カツラギヤマ
奈良と大阪の境にある霊山。一言主大神が鎮まる地です。

豆知識・この物語の背景

ワカタケル大王
埼玉の稲荷山古墳と熊本の江田船山古墳から出土した鉄剣・鉄刀の銘文にある「獲加多支鹵(ワカタケル)大王」は、雄略天皇を指すとされます。実在を裏づける貴重な考古資料です。
一言主神社
奈良県御所市の葛城一言主神社は「いちごんさん」と親しまれ、一言の願いなら必ず聞き届けてくれると信仰されています。
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