ヤマトタケルの東征

第 6 章

ヤマトタケルの東征やまとたけるのとうせい

草を薙ぎ、火を返し、愛する者を海へ喪う。

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この物語は、原文を読みやすく現代語にしたかなり“はしょった”要約・脚色版です。細部や表現は正確な原文・訳注書と異なる場合があります。

西征から戻ったばかりの倭建命ヤマトタケルノミコトに、父・景行天皇はまた新たな命令を下しました。「東方十二道の荒ぶる神と、まつろわぬ人々を平定せよ」。休む間もない出立でした。

命は伊勢の叔母・倭比売命のもとへ立ち寄り、思わず涙をこぼして訴えます。「父上は私に死ねと思っておられるのでしょうか」。倭比売命は草那芸剣クサナギノツルギと、火打石の入った袋を授け、「危急のときに開けなさい」と告げました。

伊勢で剣を授かる
伊勢で剣を授かる

相模の国に至ると、その地の国造(くにのみやつこ)が偽って言いました。「この野の沼に、たいそう荒ぶる神がおります」。命が野に入ると、国造は四方から火を放ちます。炎に囲まれ、絶体絶命でした。

そのとき命は袋を開き、まず草那芸剣で周囲の草を薙ぎ払い、火打石で向かい火を放ちました。炎は敵のほうへ吹き返り、命は無事に脱出。剣が「草薙」と呼ばれるのは、この出来事に由来します。

草を薙ぎ、火を返す
草を薙ぎ、火を返す

走水(はしりみず/今の浦賀水道)の海を渡ろうとしたとき、海神が荒れ狂い、船は진めなくなりました。妃の弟橘比売命オトタチバナヒメノミコトは言います。「私が海に入り、御命に代わりましょう。どうか任務を果たしてください」。菅の畳を波の上に敷いて身を投じると、荒波はたちまち鎮まりました。七日の後、姫の櫛が浜に流れ着き、命はそれを納めて御陵を築いたといいます。

走水の海に身を投げる
走水の海に身を投げる

東国を平定した帰り道、足柄の坂で命は東の空を仰ぎ、三度、深く嘆きました。「吾妻あづまはや」。ああ、我が妻よ。関東地方を「あづま」と呼ぶのは、この嘆きに由来すると伝えられます。

登場する人物・神々

倭建命
ヤマトタケルノミコト
休む間もなく東征へ。草薙剣と妃の犠牲に支えられ、東国を平定します。
弟橘比売命
オトタチバナヒメノミコト
荒れる海を鎮めるため、自ら身を投げた妃。深い愛と犠牲の象徴です。
草那芸剣
クサナギノツルギ
ヤマタノオロチの尾から出た神剣。草を薙いで火難を逃れました。
倭比売命
ヤマトヒメノミコト
甥に剣と火打石を託した叔母。その備えが命を救いました。

豆知識・この物語の背景

「あづま」の語源
足柄(または碓氷)の坂での嘆き「吾妻はや」が、東国を「あづま」と呼ぶ由来とされます。
草薙剣の行方
この剣はのちに尾張の地に留め置かれ、現在は名古屋の熱田神宮に祀られていると伝えられます。
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