神武東征

第 1 章

神武東征じんむとうせい

天孫の血を継ぐ若者が、東へ、日の昇る地を目指す。

◀ 人代編 中巻 へもどる
この物語は、原文を読みやすく現代語にしたかなり“はしょった”要約・脚色版です。細部や表現は正確な原文・訳注書と異なる場合があります。

日向の高千穂に住まう神倭伊波礼毘古命カムヤマトイワレビコノミコトは、兄・五瀬命イツセノミコトと語り合いました。「どこに都を置けば、この天下を平らかに治められるだろうか」。二人は東へ行くことを決め、船団を率いて日向を発ちます。

筑紫、安芸、吉備と海路を進み、幾年もかけて浪速(今の大阪)へ到達しました。しかし上陸したところで、大和の豪族・長髄彦ナガスネビコの激しい抵抗に遭います。この戦いで五瀬命は腕に矢を受け、深手を負ってしまいました。

日向を発つ船団
日向を発つ船団

苦しむ兄は言います。「我らは日の神の御子でありながら、日に向かって(東に向かって)戦った。だから負けたのだ。回り込んで、日を背にして討とう」。一行は南へ大きく迂回しますが、その途上で五瀬命は息を引き取りました。

紀伊半島を回り、熊野に上陸した一行を、こんどは荒ぶる神の毒気が襲います。兵たちは次々と倒れ、命さえも意識を失いました。そのとき、高天原の建御雷神タケミカヅチノカミが地元の者の倉に降ろした霊剣布都御魂フツノミタマが届けられます。剣を手にした瞬間、命は目を覚まし、荒ぶる神は自ずと切り倒されました。

熊野に降る霊剣
熊野に降る霊剣

険しい山道に迷う一行のもとへ、こんどは高天原から巨大な八咫烏(ヤタガラス)が遣わされます。烏の導きに従って山を越え、途中で出会った土地の者を味方につけながら、命はついに大和の地に入りました。

八咫烏の導き
八咫烏の導き

ふたたび相まみえた長髄彦との決戦のさなか、金色に輝く鵄(とび)が飛来して命の弓の先にとまり、その光に敵は目がくらんで戦えなくなったと伝えられます。こうして大和を平定した命は、畝傍山のふもとに橿原宮(かしはらのみや)を建てて即位しました。初代・神武天皇ジンムテンノウの誕生です。

登場する人物・神々

神倭伊波礼毘古命/神武天皇
カムヤマトイワレビコノミコト/ジンムテンノウ
天孫ニニギの曾孫。東征を成し遂げ、橿原宮で即位した初代天皇。
五瀬命
イツセノミコト
神武天皇の兄。浪速の戦いで矢傷を負い、東征の途上で亡くなります。
八咫烏
ヤタガラス
高天原から遣わされた三本足の大烏。険しい山中で一行を導きました。
長髄彦
ナガスネビコ
大和を治めていた豪族。二度にわたって神武軍を阻みます。

豆知識・この物語の背景

八咫烏とサッカー日本代表
道を切り開く八咫烏は導きの象徴とされ、和歌山の熊野三山の神使です。日本サッカー協会のシンボルマークにも使われています。
紀元節と建国記念の日
神武天皇が即位したとされる日を太陽暦に換算した二月十一日が、現在の「建国記念の日」の由来とされています。
この章をシェア✕LINEFacebook