允恭天皇と氏姓の乱れ

第 2 章

允恭天皇と氏姓の乱れいんぎょうてんのう

熱湯に手を入れさせ、偽りの家系を焼き分ける。

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この物語は、原文を読みやすく現代語にしたかなり“はしょった”要約・脚色版です。細部や表現は正確な原文・訳注書と異なる場合があります。

第十九代・允恭天皇インギョウテンノウは、即位を固辞し続けた人物でした。長く病を患っていたため「自分は天下を治めるにふさわしくない」と辞退しましたが、群臣の懇願と皇后の説得によって、ついに位に就きます。

その御代、大きな問題がありました。人々が勝手に高い氏姓(うじかばね)を名乗り、家系の秩序がすっかり乱れていたのです。天皇は言いました。「氏姓が乱れたままでは、正しい政はできない」。

煮えたぎる釜の前で
煮えたぎる釜の前で

そこで行われたのが盟神探湯クガタチです。飛鳥の甘樫丘(あまかしのおか)に釜を据えて湯を煮えたぎらせ、人々に手を入れさせました。正しい氏姓を名乗る者は無事で、偽る者は火傷を負うという神判です。結果、偽っていた者たちは怖れて逃げ出し、氏姓の秩序は正されたと古事記は伝えます。

この御代にはもう一つ、切ない物語が語られます。皇太子木梨之軽太子キナシノカルノヒツギノミコは、同母妹の軽大郎女カルノオオイラツメと愛し合ってしまいました。同母の兄妹の恋は、当時最大の禁忌でした。

偽る者は逃げ去る
偽る者は逃げ去る

事が露見すると人心は太子を離れ、太子は伊予(今の愛媛)へ流されます。妹は兄を慕って後を追い、伊予の地でついに再会を果たしました。しかし二人に許される道はなく、ともに命を絶ったと伝えられます。

伊予へ流される太子
伊予へ流される太子

「君が行き 日長くなりぬ 山たづの 迎へを行かむ 待つには待たじ」。あなたが去って長い日が過ぎました、もう待ってはいられない、迎えに行きます。二人が交わした歌は、古事記のなかでもとりわけ美しく、悲しい響きを残しています。

登場する人物・神々

允恭天皇
インギョウテンノウ
第十九代天皇。盟神探湯によって乱れた氏姓を正しました。
木梨之軽太子
キナシノカルノヒツギノミコ
允恭天皇の皇子。禁じられた恋により流罪となりました。
軽大郎女
カルノオオイラツメ
太子の同母妹。兄を追って伊予へ向かい、ともに果てました。
盟神探湯
クガタチ
熱湯に手を入れて真偽を判じる、古代の神判です。

豆知識・この物語の背景

盟神探湯の跡地
奈良県明日香村の甘樫坐(あまかしにいます)神社では、この故事にちなむ盟神探湯の神事が今も行われています。
同母と異母の違い
古代では異母兄妹の結婚は許されましたが、同母兄妹は固く禁じられていました。この違いが悲劇の背景にあります。
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